大堀相馬焼コラム

大学生への松永窯体験インタビュー

こんにちは!ライターの石田です。
前回“想いが距離を越えるとき”と題し、冬期インターンシップで生まれた大堀相馬焼の職人さんと京都の学生さんの距離を越えた心の交流を紹介させていただきました。

その後、冬期インターンシップに参加してくれた学生の吉田くんが春休みを利用して福島の松永窯で一週間の職業体験を行いました。今回は吉田直弘くんと、一緒に体験に参加した室井早紀さんの二人に職業体験を通して感じたことをインタビューしてきました。

ー京都美術工芸大学に通う吉田くんと室井さんは陶芸を学ぶ大学4回生ですよね?
 そもそもですが、なぜ松永窯で職業体験をされたのですか?
室井さん(以後、室)
「漠然と卒業後も陶芸をしたいと思っていましたが、何がしたいかは具体的に分からなくて悩んでいました。そんな時に吉田くんから“一度仕事場を見せてもらったら?”とアドバイスをもらい、松永窯での職業体験に参加することにしました。」

ー2回目の訪問となる吉田くんはどうですか?前回と比べて違うところはありましたか?
吉田くん(以下、吉)
「自分の気持ちの面で違いがありましたね。1回目は陶芸を学ぶ上で、実際の仕事場に対して興味があったので見てみたいと思っていました。
でも、今回は前回知った地域おこし協力隊として福島で働きたいと決意して話を聞きに行きました。」

ーなるほど。二人とも自分の将来について考えるために参加されたんですね。では、職業体験とは具体的にどんなことをしたのですか?
吉「前回のインターンシップでは自由にろくろを触らせてもらったのですが、今回は実際の業務に関わらせていただきました。」
室「釉掛け、転写、墨入れ、窯詰め、型作りなど陶芸の技術や知識が必要なことから梱包などの事務的なことまで、本当にいろいろと体験させてもらいました。」

ー体験してみてどうでしたか?
室「思っていた以上に楽しかったです!」
吉「うん。うん。」(頷く)

ー大学で学んでいる時と違うところはありましたか?
吉「スピードですね。例えば、釉掛けひとつとっても(松永窯の)お母さんがやるとすごく早いんです。作業に無駄がないというか…何気なくやっているように見えて、今まで経験を積んできてコツ?みたいなものが詰まっているんだと思いました。」
室「私は仕事と休憩がきっぱり分けられているなと感じました。松永窯にはいろんな人が訪ねてくるのですが、その時の和やかな雰囲気と仕事の時のメリハリがしっかりしていて、それが作業をスピーディーにできることに繋がっているのかなと思いました。」

ーいろんな人が訪ねてくると言われていましたが、どんな人が訪ねてきましたか?
室「本当に色々ですよ。地元の人や、テレビの取材、他県から車で買いに来る人まで。(松永窯の)お父さんやお母さんの知り合いで話したいから来るっていう人もおられました。」
吉「松永窯さんではオンラインショップもやっているので、年配の方だけでなく親子連れや若い人たちも来てはりましたね。特に遠方から来た人は、どうやって作られているのかを熱心に見学する人が多かったです。」

ーなるほど、作り手と使い手の貴重なコミュニケーションの場となっているんですね。では、そんな人を集める大堀相馬焼の魅力ってなんだと思いますか?
吉「二重構造など使う人のことを想って作られているところですかね。どうやったら使い手の人が使いやすいか考えられているのが魅力だと思います。」
室「たっぷり腕はお茶だけでなくスープを入れるのにも適しています。見た目も可愛くて使いやすいので、“用”と“美”を兼ね備えてるなと思いました。」

ー伝統的な二重構造の湯のみから近年発売された“たっぷり腕”まで使い手とともに変化しているのが大堀相馬焼の最大の魅力なのですね。では、最後に松永窯での職業体験をしてみて自分の将来を考えるためのヒントは得られましたか?
室「はい!今まで漠然と陶芸に関わりたいと思っていた気持ちから“ここで働きたい!”という想いに変わりました。」
吉「僕はもともと地域おこし協力隊として働きたいと思っていたのですが、その気持ちがより強くなりました。来年から協力隊として地域全体を見て、陶芸の現状を知り、その上で自分が陶芸を通して何ができるのかを考える3年間にしていきたいと思いました。」

「来年の地域おこし協力隊の募集はこれからなので、まだ働けるかは未定ですが(笑)」といいながら笑う二人。今回の職業体験は自分の将来を考える良い機会となったようでした。

震災後、1からのスタートとなった大堀相馬焼と来年の春に大学を卒業する二人はこれからどんな未来を創っていくのかとても楽しみです。

 

図1

図2

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