大堀相馬焼コラム

陶器と磁器の違いは何?見分け方のポイントと炻器やボーンチャイナについて解説

陶器と磁器の違いをガラス質を用いた作り方や主な産地など様々な視点から比較し、炻器とボーンチャイナについても解説していきます。
また、陶器や磁器は電子レンジを使うことはできるのでしょうか。
陶器と磁器のそれぞれのお手入れと注意点についても見て行きます。

陶器と磁器の違いの参考になるマグカップの画像

陶器と磁器の違いとは

日常生活で使う焼き物には、大きく分けて「陶器」と「磁器」があります。
この2つは何が違うのでしょうか。
原料・性質・作り方の点から比較していきます。

原料

陶器、磁器ともに粘土からできており、原料もほとんど同じです。
陶磁器製作の粘土には、[粘土・珪石(けいせき)・長石]という3要素が必須ですが、陶器と磁器ではこの3要素の割合が異なります。
珪石とはガラスの主な材料となる鉱物です。長石と一緒に焼かれることで熔けてガラスになります。
長石とは、岩石に基本的に含まれている鉱物で、焼かれることで珪石を熔かし、粘土素地の隙間を繋ぐ役割を果たしています。
(陶器)
陶器は土由来の粘土からできており、そこから「土もの」と言われています。
自然界で取れた粘土層を原料にした粘土で、素地(きじ)は茶色や褐色をしています。
3要素の割合は[粘土:50%、珪石:30%、長石:20%]です。
粘土質の割合が多いため、吸水性が比較的高くなっています。

(磁器)
磁器は陶器に対して「石もの」と言われ、石の割合が高い粘土から作られます。
石を砕いたものなどからできた粘土であるため、白色に近い色をしています。
3要素の割合は[粘土:30%、珪石:40%、長石:30%]となっており、珪石と長石の割合が非常に高くなっています。
珪石の割合が増えることで、粘土の隙間を埋める働きが強くなり、ガラス質が多くなることで強度が増しています。

性質

原料の割合が異なることから、焼き上がったあとの性質も異なってきます。
(陶器)
粘土の隙間を埋める珪石が少ないため、吸水性が高いです。
密度が低くなるため、強度は落ちますが、柔らかい質感になります。
表面がざらざらとして分厚く、土の素朴な風合いを感じることができます。

(磁器)
ガラス質の多い粘土から作られるため、吸水性はほとんどなく、陶器に比べて硬くなります。
また、太陽にすかすと光を通し、触るとなめらかな表面の質感があります。
透光性があることからもわかるように、透明感のある白色をしており、強度が高いことから陶器に比べて薄く作られていることが多いです。

作り方(焼き方)

焼成の温度も陶器と磁器で異なります。
また、焼き方にも2種類あり、空気を多く含んだ青い炎で焼き上げる「酸化焼成」と、空気の少ない赤い炎で焼いていく「還元焼成」に分かれます。
1200度を超えると珪石が溶けるため、焼成温度も大きなポイントです。
(陶器)
陶器は800〜1200度前後の温度で焼き上げていきます。
酸化焼成と還元焼成の両方を駆使して焼き上げていきます。

(磁器)
一方の磁器は、薄く形作られ、陶器より100度ほど高い1300度前後の高温で焼かれます。
基本的に還元焼成によって焼かれ、白い焼き上がりになります。
酸化焼成で焼くと、黄色っぽい色合いになります。

そのほかの焼き物の種類

陶器と磁器以外の焼き物にはどのような種類がるのでしょうか。

炻器

「炻器(せっき)」は、陶器と磁器の中間のような焼き物です。
陶器と同じように透明性もなく、叩くと濁った音がしますが、吸水性は磁器と同じくありません。
1100〜1250度で焼成され、瓶や壷などが多いです。

ボーンチャイナ

磁器と良く似た高級焼き物として「ボーンチャイナ」という種類があります。
陶器でも磁器でもなく、イギリスで磁器の白さのもととされる原料が手に入らず、代わりに「ボーンアッシュ」というものを原料に加えたことから誕生しました。
柔らかい質感と温かみある白さをしており、しっとりとした柔らかさも特徴です。
磁器に比べて非常に丈夫で、透光性も非常に高いことから、現在では高級品となっています。

陶器と磁器の見分け方

原料や焼き方など、製作段階での様々な違いから、焼成後の製品で様々な違いが生まれます。

ブランド

日本国内のに数多くある陶磁器のブランドによって陶器か磁器か分けることができます。
ここではそれぞれの代表的なブランドを紹介します。
(陶器)
美濃焼・瀬戸焼・信楽焼・萩焼
(磁器)
有田焼・波佐見焼・九谷焼

叩いてみた時の音

(陶器)低く濁った音
(磁器)高く澄んだ音、金属的な音

器の厚さ

(陶器)分厚くい、温かいものの保温性が高い(熱伝導率が低い)
(磁器)薄い、中身によって熱く冷たくなりやすい(熱伝導率が高い)

光の透け具合

太陽など光に透かしたときの透け具合を「透光性」といいます。
(陶器)透光性はない
(磁器)透光性あり

収納や取り扱いの注意点

異なった性質から、実際に生活のなかで使う際に気をつける点はあるのでしょうか。

収納するとき

(陶器)
吸水性が高く、匂いや汚れが残りやすいため、使い終わったあとにしっかり乾燥させてから収納する必要があります。
(磁器)
吸水性がないため、水気を拭き取ってすぐに収納することができます。

洗う時

(陶器)
密度が低く吸水性が高いことから、水分に限らず油分や汚れが器の隙間に入り込み、残ってしまう場合があります。
長時間の浸け置き洗いや汚れた水に浸けることで、匂いやカビ、色移りが起こってしまいます。

また、衝撃に弱く壊れやすいため、食洗機の使用はできるだけ控え、スポンジでやさしく洗いましょう。

(磁器)
粒子が細かく密度が高いことから、匂いやカビの心配はほぼありません。
陶器に比べて丈夫ですが、金銀や絵柄は剥げてしまうおそれがあるため優しく洗うことが大切です。
また、特に銀の絵柄は漂白税によって変質する可能性があるため注意が必要です。

電子レンジで使う時

(陶器)
壊れやすいため、できるだけ電子レンジの使用は控えましょう。
電子レンジを使うことで、徐々に器の劣化が進み、割れや欠けの原因となってしまいます。
すぐに壊れるということはありませんが、できるだけ長く器を使うためにも、電子レンジの使用は出来るだけしないようにしましょう。

(磁器)
基本的に電子レンジに対応しているものが多いため、使用自体は問題ありません。
しかし、急激な温度変化に弱いため、急熱・急冷はひび割れや破損の原因となります。
冷えた器を温まったオーブンに入れる、電子レンジで加熱した直後に濡れたタオルで器を持つなどの大幅な温度変化は避けましょう。

陶器も磁器もそれぞれ特徴がある

同じ粘土からできた陶磁器である陶器と磁器ですが、多くの違いがあることが分かりました。
それぞれの器の性質に合った使い方で、より長く自身の器と付き合っていきましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

トップに戻る