大堀相馬焼コラム

【ご購入者インタビュー】引き出物としてプレゼント〜細田夫妻〜

大堀相馬焼を引き出物としてゲストにお贈りした方へのインタビュー。第1弾は、松永陶器店の4代目松永武士がかつて通っていた、塾の先生である細田洋平さん・奥様槙記さんへのインタビューです。細田さんが引き出物に込めた想いとともに、細田さんのご実家にある震災前の大堀相馬焼についてもお話を伺いました。

■1 ゆかりあるものを、と思ったら教え子の顔が浮かんだ

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– この度はご結婚、おめでとうございます。今回、大切な結婚式の引き出物に大堀相馬焼を選ばれたということですが、まずはどんなものを選ばれたのか、教えていただけますか。

細田:今回、ゲストの方に合わせて、渡すものを変えたんです。お酒を飲む人はタンブラーにしました。タンブラーの色はピンク、コバルト、グリーン、ブラック、イエローと5色あって、ゲストの雰囲気に合わせて変えました。
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あとはマグカップだったり、女性には馬がたくさんいるマグ(うまくいくマグ)を贈りました。

– ゲストの方に合わせて贈られたのですね。素敵です。何か反響はありましたか。

細田:結婚式というと、名前入った皿とか器っていうイメージがある中で、なかなか小洒落たものが入ってるねと言われましたね。普段使いもできつつ、ちょっと特別感もあるというか。マグもそうだし。あとは、タンブラーはビールの泡がクリーミーになるっていうことで好評でしたよ。

松永:タンブラーは、中がちょっとざらざらになっているんですよ。これが泡をきめ細やかにしてくれるんです。飲み口はつるんとさせて、飲みやすくしています。

– 細田さんが引き出物に大堀相馬焼を選ばれた経緯を、改めてお伺いしてもよいでしょうか。

細田:僕が経営に関わっている塾があったんですが、松永くんがそこの生徒だったというのがご縁ですね。結婚式することになったとき、引き出物のカタログが式場からきたんですよ。ブランドもののお皿とか、いまひとつピンとこないなと思っていた時に、そういえば、そんなものを作っているやつがいたぞ、と思い出しまして(笑)。

せっかく贈り物にお金をかけるのであれば、結婚式もなるべくストーリー性のあるものにしたいというのが僕の想いだったので、いいんじゃないかと思って。僕も人に教える仕事一筋で生きているから、教え子のみんなが社会に出ていろんな仕事をしている中で、ゆかりのある人の関わるものを贈る、というは結婚式の一つの見せ方なのかなと思いました。

それに、松永くんが震災後、新しい形で店を作っていくために色々やっているのも知っていましたし、伝統工芸をやってきた家の事業に携わっているっていうのは、親孝行しているなという思いもありましたね。それでぜひ、使わせてもらえないかっていうことで連絡をしました。そしたら大堀相馬焼は大変縁起がいいということを言われて。それで決めたんです。
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– まさに、細田さんならではのストーリーが詰まった贈り物になったのですね。

■2 今や貴重。目の前で大堀相馬焼の変遷をたどる

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– 細田さんのご実家には、今や貴重となった、震災前の大堀相馬焼もあると伺いました。

細田:これです(写真左)。震災前の冬に、浪江に行って実際に大堀相馬焼の窯を見せてもらったことがあったんです。松永くんのお父さんにもご挨拶して。その時、ただ飯食ってくるんじゃ悪いから何か買っていこうと思って(笑)。他の民芸品には正直、そんなに惹かれなかったけど、これは5個くらい入っていて、ちょっとかわいいんじゃないかと思って。中身が冷えにくい二重底という特徴もある作品だから、お土産にもちょうどよくて買って帰った感じですね。

– 二重底というのは、大堀相馬焼ならではの技法だそうですね。

松永:そうなんです。この技術を身につけるのに10年はかかるって言われていて、今この構造が作れるのは職人さん1人だけなんですよ。

– お1人だけなんですね…震災前後で、ものとしては何が違うんでしょうか。震災前のものの方が、なんだか白っぽく見えます。

松永:土の関係で、色が変わっているんです。震災前の土は採れなくなってしまっているので、別のものを使っています。その影響もあって、以前のものは、大堀相馬焼の特徴でもあるひび割れがきめ細かいんです。今はここまでは細かくできないんですよね。でも、震災でほとんど割れてしまって。だからこうして残っているのは貴重なんです。

– 一目でわかるくらい違いますね。

細田:あと、真ん中のものは震災から復興した後、初めて買ったものです。これは普段使い用ですね。2011年に不幸なことに3.11があって、浪江があんな状態になってしまったにもかかわらず、何年か経って事業を再開すると聞いて。大したことはできないけど、何か力になれればというのもあって買ったんですね。2013年ごろかな。そのときはまだあまり品数もなかったんですが。
でも、そこから年数がまた経って、引き出物を選ぼうとしたとき、ホームページを見たらだいぶデザイン性が増してスタイリッシュになってたから。この進化はすごいなと思いましたね。

松永:タンブラーなんかは、伝統的な左馬は残しつつ、結構変えていってます。おかげさまで、昔と比べるとだいぶ若い方も買ってくれるようになったという印象です。

– いろんな出来事を経て、進化しているのですね。目の前でその変遷を見られるのは、改めて貴重なんだなと思います。

■3 時には、作り手に想いを馳せながら使ってほしい

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– 教え子である松永さんのご活躍を、どうご覧になっていらっしゃいますか。

細田:よくやってるなと思います、本当に。変な話だけど、東京の大学で勉強してから、並にどこかの企業に就職する道もあったわけじゃない。でもあえて福島に戻って家業をやる、それも震災があって帰還困難区域で帰れない中で新しく始めるというのは本当に大変だと思う。こうしてきちんと続いているし、伝統的な大堀相馬焼も守りつつ、デザイナーさんとのコラボレーションとか、新しいこともして、進化もしてる。すごいなと思いますよ。

– 大堀相馬焼についても、思うところがあれば一言いただけますか。

細田:1つの土地で脈々と続いてきたものが急になくなるというのは、本当に想像ができないくらいのものだと思います。自分も商売をやっているので、今急に追い出されるってなったって、これはかなり大変な話だと思う。でもその中で、大堀相馬焼の作り手の方がもう一回窯を作って焼いているのは、すごいなと思いますね。

みなさん、もらったものを普段使いしているとき、誰の結婚式でもらったものかっていうのはあまり忘れないものだと思うんですよ。そのとき、もちろんめでたいこととして思い出してほしいんですけど、同時に作り手の方に起きたことにも、たまには思いを巡らしてもいいのかなという風には思いますね。

– この大堀相馬焼を引き出物にと考えられている方に、メッセージをお願いします。

細田:自分は、個人的に松永くんとのつながりで応援したいっていう思いもあったんですが、大堀相馬焼はもともと縁起がいいとされているみたいですし、震災を乗り越えて広がっていっているっていう点でも、縁起がいいというか前向きなイメージがあるんじゃないかなと思うんです。ものとしての良さだけでなく、そういった意味でもいい贈り物なんじゃないかなと思いますよ。

– ありがとうございました。

(取材・文 = 武藤あずさ)

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