大堀相馬焼コラム

インタビュー:大堀相馬焼×福島りょうぜん漬 ~福島の老舗漬物店、初のコラボ商品は大堀相馬焼と

大堀相馬焼とのご縁をつくってくださった企業様へのインタビューシリーズです。今回は、福島名物「福島りょうぜん漬」を作り続けてまもなく60年となる森藤(もりとう)食品工業株式会社にお邪魔し、統括本部長の森藤洋紀(もりとう・ひろき)様にお話を伺いました。

01森藤さんA

▷福島りょうぜん漬(森藤食品工業株式会社)
福島市大波星ノ宮32
http://ryozenzuke.jp

60年近い歴史の「福島りょうぜん漬」が大堀相馬焼とコラボ

02建物外観
▲社屋の前の大きな漬物の樽は1962年の創業当時より使用されていたもの▲

――本日はお忙しい中ありがとうございます。地元の人ならみな知っている「福島りょうぜん漬」ですが、森藤食品さまは当初から漬物を作ってこられたのですか?

はい。現住所は福島市大波ですが、1962年の創業時はもう少しだけ東寄り、当時の霊山町(りょうぜんまち)に社屋を構えていました。いまは少なくなってしまいましたが、以前はこのあたりキュウリの一大産地だったんですよ。そのキュウリを使った「かあちゃん漬」は、創業当初から今まで続く定番商品です。加工場の従業員がみな地元のおかあさんたちだったことから、その名前になったと聞いています。かあちゃんがあるならとうちゃんも、ということで数年後に「とうちゃん漬」も発売しました。

その後もお客様のご要望に応える形で商品数が増え、現在では季節限定商品やセット商品も含めると80種ほどあります。でも私たちはずっと漬物ひとすじ。それもほとんど機械を使わず、選別もカットもすべて手作業で行っています。

03商品A

03商品B
▲本店に並ぶ、さまざまな素材・味付けのお漬物。ゴボウと大豆を合わせた人気の新商品のほか、季節限定メロンや山芋の浅漬けも▲

――そしてこの度は、お漬物3種と大堀相馬焼の特製お猪口を詰め合わせた限定商品を発売されたのですね。

そうです。福島の日本酒は全国新酒鑑評会で金賞受賞数が6年連続日本一ですよね。その日本一おいしい福島のお酒にぴったりの肴として、ぜひ我々の「福島りょうぜん漬」を召し上がっていただきたいと考えたのです。

日本酒そのものとセットにする案もありましたが、お酒の味も好みも様々ですから、それならお猪口と合わせてみようと。それも日本一のお酒にふさわしく、福島産の手作りの陶器がいい。そうやってまるごと福島の魅力を楽しんでいただきたいという企画で、3月21日にオンラインショップで発売しました。

04コラボ商品
▲数量限定「福島りょうぜん漬&大堀相馬焼お猪口つきセット」(森藤食品工業様ご提供)▲
オンラインショップ:https://ryozenzuke.shop-pro.jp/?pid=141375540

――なるほど、すてきな企画ですね。でも福島県内には他にも焼き物はありますが、その中で大堀相馬焼をお選びになった理由はなんでしょう?

やはり、昔からこの辺で焼き物といったら相馬焼でしたからね。二重焼きの湯呑みなど私の自宅でも使っていましたし、会社のCMの音楽も相馬流山(相馬地方の民謡)を借用しています。だから、今回の企画でも相馬焼を使うことは最初から決めていました。それで調べていくうちに、浪江町で作られていた大堀相馬焼が震災と原発事故でどうなったのか、窯元たちの現状などもわかって、ぜひ手を取り合って何かをしたいと思ったのです。

――お猪口のデザインをお選びになるときには、西郷村で再開している松永窯に行かれたのですね。

ええ。せっかく作るなら「福島りょうぜん漬」のロゴも入れたかったので、そういう注文にも応えてくれる窯元をネットで探したところ、松永窯さんにお願いすることになりました。デザインも釉薬の色もいくつかありましたが、今回は初めてということもありオーソドックスなものを選定。ロゴシールの転写を実際に体験させてもらいましたが、なかなか難しかったですね(笑)


▲シール転写に挑戦する森藤さん▲

手作りのぬくもりのあるお漬物。もっと地元に愛される企業に

――この動画はご自身のブログにも掲載されていますが、情報発信には力を入れていらっしゃるのですか?

ブログは2年半ほど前から毎日更新しています。いろんな話題で書いていますが、やはり商品や原材料のこと、それから漬物という食品の効能や食生活の考え方についてのものが多いですね。

▷「福島りょうぜん漬け」漬物王子ブログ:https://ameblo.jp/ryozenzuke/

近年の健康志向で、「塩分」は目の敵になっているところがあります。漬物は醤油や味噌とならんで高塩分の代表格とされ、「控えろ」と言われるのですが、塩分自体は生きていく上で必須のものです。メディアでは、糖質制限だといってご飯を減らせという一方でスイーツ特集なんかしているでしょう。糖分も油分ももちろん適量は身体に必要ですからね。塩分も同じことなのに、なぜか一方的に悪者扱い。

塩分摂取量の目安は1日あたり7~8グラムとか言われています。たしかに私たちの古漬けには100グラムで3.5 グラム程度の塩が入っていますが、漬物だけ100グラムも食べますか?また精製塩と天日塩でも違います。ひとつの数字だけ、物事の一面だけに反応するのはいかがなものか。そんなことも私たちから発信していかなきゃならないと思っています。

05バイキングA

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▲本店では平日(火~金)限定で、漬物バイキングとご飯とみそ汁がセットになったランチを提供▲

――たしかにそうですね。数字だけ見て、というと8年前の原発事故直後の食品の放射性物質検査が思い出されますが、当時は御社にもかなり影響があったのでしょうか?

それはもう。震災前、福島県内と県外の売上は約半々だったのが、震災後は県外の販売が激減しました。一時は県内の直営店にもお客様がまったく来なくなって、閉めざるを得なかった店舗もあります。その後は県内の販売が少しずつ盛り返し、現在では直営店が4つ。また県北を中心に120か所ほどで委託販売しており、通販やオンラインショップもおかげさまで順調です。震災前は毎月21日の「漬物の日」に提供していたランチも、震災後の中断を経て違う形で復活させ、平日限定の漬物ランチとしてご好評をいただいています。

06森藤さんB
▲近い将来、4代目として経営を引き継ぐことになる森藤洋紀さん▲

――そんなご苦労も乗り越えられた「福島りょうぜん漬」、今後の戦略をお聞かせください。

全国展開に力を入れるよりも、まずは福島県の方全員に食べていただくことが目標ですね。日本酒や白いご飯に合わせる以外にも、料理に使うなど漬物のおいしい食べ方はたくさんあります。いろんな方法でそれをお伝えして、多くの方に漬物に親しんでもらいたいと思います。そして、なるべく地元産の原材料を増やしたい。特に、主力のキュウリ漬のキュウリですね。一度は減ってしまったこの周辺のキュウリ農家さんも、また生産をお願いして少しずつ入荷が増えているんですよ。

ていねいに生産された原料を使い、地元の人がていねいに手作りしたぬくもりのあるお漬物。だから「福島りょうぜん漬」は60年近くも愛されてきたのだと思うのです。これからもっと地元色を強め、もっと地元に愛される企業になって、おいしい漬物をお届けしていきたいと思います。

――今夜はさっそく「福島りょうぜん漬け」を肴に一杯いただきます。どうもありがとうございました。

2019年3月取材
聞き手・文・写真=中川雅美

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