大堀相馬焼 松永陶器店

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「福島天然ガス発電所」の歩みを祝う。大堀相馬焼のタンブラー

福島県浜通り北部の相馬港にある「福島天然ガス発電所」。地域の復興に貢献したいと、2020年に運転を開始した、液化天然ガス(LNG)を気化した天然ガスを燃料とする火力発電所だ。

運営しているのは、福島ガス発電株式会社。石油資源開発株式会社および三井物産株式会社との共同出資で設立され、後に大阪ガス株式会社、三菱ガス化学株式会社、北海道電力株式会社が参画し、現在は5社による特別目的会社である。

2025年春。福島ガス発電株式会社は、大堀相馬焼松永窯とコラボレーションして、会社設立10周年・発電所運転開始5周年を祝うタンブラーを作成した。

左から、福島ガス発電株式会社 石井美孝社長、大堀相馬焼松永窯4代目・ガッチ株式会社 松永武士

地域のゆかりのものを作りたいという想いから始まった記念品の製作。地域と関わりながら、福島県浜通りのインフラとして復興を支えたいという福島天然ガス発電所の歩みを、福島ガス発電株式会社石井美孝社長に聞く―――。

震災をひとつの機会に相馬港に生まれた、環境負荷の少ない発電所

福島天然ガス発電所を上空から見た様子 写真提供:福島ガス発電株式会社

福島天然ガス発電所の燃料とする天然ガスは、温室効果ガス(CO₂)や大気汚染の原因物質(NOx)の排出量がもっとも少ない燃料だ。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「ガスタービン・コンバインドサイクル方式」により、世界最高クラスの発電効率を実現している。発電設備は2基合計で118万キロワット。これは一般家庭のおよそ40万世帯分の電力に相当するのだという。

なぜ、相馬港に天然ガスを使った発電所が誕生したのだろうか?

「福島ガス発電株式会社の設立を主導した石油資源開発株式会社は、新潟・仙台間のガスパイプラインを通じて、新潟から天然ガスを供給しています。私たちは、長年の間日本海側だけではなく、太平洋側からの供給基地も必要であると考えてきました。自然災害が多い日本では、日本海側、太平洋側に供給ソースがあることで、万が一の際にもガスを安定して供給することができるのです。

2011年東日本大震災が起きたことを一つのきっかけとして、計画が急速に進展しました。太平洋側にインフラ基盤を確立し、東北太平洋沿岸地域の復興に貢献したいと、相馬港に福島県初のLNG基地の建設、その隣に天然ガスを使用した火力発電所を建設することを決定しました。」

2020年春に、福島天然ガス発電所が運転開始。会社が設立されたのは、それに先駆けた2015年。2025年は、福島ガス発電株式会社のメモリアルイヤーでもある。

「会社設立10周年・発電所運転開始5周年の節目に、関係各社や社員たちに記念品をお送りしたいと思ったのです。せっかく贈るのであれば、地域ゆかりの工芸品を注文したいと、大堀相馬焼松永窯で記念品を注文させていただきました」

「右に出るものはいない」と、馬が走る縁起の良い大堀相馬焼のタンブラー

福島ガス発電株式会社が選んだのは、大堀相馬焼 松永窯 大タンブラー

大堀相馬焼の特徴のひとつである二重構造で作られたタンブラーは、飲み物がぬるくなりにくい。内部が素焼きのため、ビールを注ぐときめ細かな泡が発生する。細長く作られたデザインは炭酸が抜けにくく、ゆっくりと味わうことができる。まさにビール好きのための“うれしい”が揃ったタンブラーだ。

「うちの会社もお世話になった企業さんも、酒をたしなむ人が多いのでこの商品を選びました。社員たちからは、クリーミーな泡で、ビールが美味しくなると評判です」

中央には、大堀相馬焼の特徴である「走り駒」が描かれている。旧相馬藩の「御神馬」をもとにしたという左向きに走る馬から「右に出るものがない」と、縁起ものとして親しまれてきた。

もともと、この地域には昔から節目やハレの日に、企業や自治体が大堀相馬焼を配ることで願を掛ける風習もあったのだという。

「色は、福島ガス発電株式会社のロゴの色に近いコバルトブルーに決めました。裏面には、社名を入れて。関係各社の方にお送りして、好評をいただきました」

地域に愛されるインフラとして、福島・相馬の復興を支えていきたい

復興に寄与することをひとつの目的に生まれた福島天然ガス発電所が、最初に掲げたスローガンは、「3つ星発電所を創ろう」。安全・品質・信頼が揃った、地域の人に愛される発電所にしたいという想いから始まったのだという。

「発電所のような大きなインフラ設備は、地元の協力がないと運営ができない。地域の人々に信頼されて、親しまれる発電所になることが一番大切なんですよ」

出前授業の様子 写真提供:福島ガス発電株式会社

そのために、地域活動にも積極的に参加している。甲冑に身をかためた約400騎の騎馬武者が疾走する無形民俗文化財「相馬野馬追」にも、毎年参加。地域の子どもたちに向けて、出前授業も行っている。

「3つの小学校の6年生を対象に、発電所の仕組みやエネルギーについて考える授業をしています。新型コロナ禍が明けた2022年から、発電所の見学も再開しました。中学校・高校、町内会の方など多くの方に、発電所の見学にお越しいただいています。地域の人に開くことが大事ですよね」

地域と関わる姿勢は、仕事以外の時間にも表れている。石井社長は、発電所に出張に出かけた際には、地元で美味しいものに舌鼓を打つとか。

「学生時代は日本酒が苦手だったのですが、新潟・秋田に会社の拠点があったおかげで日本酒好きになりました。福島にも素晴らしい蔵の旨いお酒がたくさんある。

お酒もそうですが、出張の時は相馬の魚介類が楽しみです。懇親会で美味しいものを囲んで、発電所の人たちと話す時間が幸せですね」

地域と共に進み続ける福島天然ガス発電所。最後に、福島の復興に向けての想いを伺った。

「2017年に浜通りに新しい産業を生み出す『福島イノベーション・コースト構想』が制定されました。2020年に運転を開始した福島天然ガス発電所は地域に生まれた新しいインフラとして、復興の一助を担う長男坊的な立ち位置かもしれないと個人的には考えています。

地域の皆さんと一緒にやっていくこと、しっかりと発電所を運営することが、社会や地域に貢献できる道だと信じて、これからも福島県浜通り発の電気を作り続けたいと思います」

Text&Photo.Shino Arata